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2012.07.31 Tuesday
「レオン」を見たことがある人はレストランにルイス役のダニー・アイエロが出てきた時点で「あれ、続き? おっさん出世したな」なんて錯覚してしまいます。
何かレストランにいる姿がしっくりくるのはどうしてでしょう。
飲食店に勤めたことのある人は、映画を見ながら厨房の戦争状態とかお客で混雑するフロアの様子とか実感としてわいてきます。
食べているほうは混雑時よく待たされたり次の料理が来なかったりオーダー通ってないなど、よく経験したことがあるのではないでしょうか。
我慢の限界が来ても食べるまでは帰れない苛立ちとかね。
この映画、脚本がよく出来ています。
レストランの厨房の戦争状態と掛け合わせながらシナリオを、ほとんどレストラン内のみで展開していくところ「密室」とまでは言いませんが、それに近いサスペンスになっています。
一体誰が一番料理しているのかということですよね。
カメラワークも抜群でちょっとしたドキュメントタッチの構図が展開していくのも臨場感満点。
エドアルド・バレリーニはルイスの子供ウールとしてレストランの料理長として扮しています。
父に店を譲って俺に任せてくれとせがみ、実際ウールの手腕で繁盛店へとのし上がっています。
しかし料理の味が気に入らない父。
味覚って難しいですよね。
それぞれ微妙な好みがあって、結構小さい頃に形作られたり、長年親しんだ味覚に引きずられたりします。
母親の手料理が美味しかったら、その味を求めがちになりますよね。
うちの家庭はシンプルな和食が多いのですが、香辛料など混ぜていくと、あまり好んだりしません。
わりと偏食していないつもりでも、好んで食べるものは皆さんあると思います。
その「好み」が色んな「偏見」に繋がりがちなのは皮肉な事ですが、オーナーも文句を言いながら、店の切り盛りを息子に任せている辺り、やはり一番柔軟な視野を持っているのでしょう。
それにしても日本ってかなりの料理が楽しめて、国も段々増えていっていますよね。
そしてすべて日本風にアレンジするので、現地の料理とはだいぶ違う場合があります。
これほど多国籍な料理を楽しめる国も、なかなかないのではないでしょうか。
安いお店だとなかなかありませんが、プロの技や味を守っているお店はたくさんあります。
ニューヨークもまたしかり。
野望を持った人たちがこの街で出店しては消えていきます。
この映画でも激戦区のニューヨークで繁盛しているレストランなのですから、相当おいしいのでしょう。
エドアルト・バレリーニが「料理人には二つの側面があって、ひとつは野性的な一面と創造的な一面だ」と言っていたような気がします。
獲得するための野性。創造のための柔軟さ。
料理を作ることもそうですが、創造を洗練させていくというのは、野性的な貪欲さがないと見えてこないし見識も鈍ります。
毎日食べないと生きていけませんし、毎日の欠かせぬ行為の中に新しい見識や想像を植えつけられるって奥が深いです。
レストランの日常の中に練りこまれたストーリーを入れアレンジしていく。
一見地味ですが、見終わってみると満腹度ありの映画です。
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