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2012.07.31 Tuesday
挿入曲の「コーリング・ユー」が一躍有名になった映画なのですが、最初コメディー映画かと思うほどの出だしです。
ハリウッドの映画かと思いましたが西ドイツの映画でした。
太ったドイツ人女性が旦那に車から追い出され砂漠をさまよい、カフェ兼モーテル経営の黒人女性がイライラガミガミ怒ってばかりで旦那を追い出し泣いているところに泣いているドイツ人女性が来るという、最初「なんだこれ」って思ってしまうのですが、この太ったドイツ人女性のマリアンネ・ゼーゲブレヒトが最後にはとてもいい女に見えてきて、黒人女性のキャロル・クリスティン・ヒラリア・パウンダーの印象がガラリと変わります。
実はどちらも多才すぎる女性だったのだということがわかります。
お話の筋としては一人の異種の存在が来ることによって、殺伐としていた環境がみるみる変化していくという、今ではありがちなパターンなのですが、でも見ていると「え、そこまでやっちゃうの?」というところまでやってしまいます。
普通の神経じゃそこまでやろうなんて気が回りません。
色んなところが綺麗になっていくし、人もいっぱい来てにぎわっちゃうし、心まで丸くなっていくような気がいたしますが、周囲が砂漠地帯というのが余計にいい味を出しています。
これが緑豊かだったら少し印象が違っていたかも。
好意を示しても嫌悪で最初は返されます。
好意を持ち続けることをやめずにいると、段々と時間とともに嫌悪が薄れてきて理解を示すようになるのですね。
特に人間って理解するうえでの共通点がないと、なかなか理解の入り口すら通ってくれませんから、異種の価値観や思想を持っている人間には最初警戒と嫌悪から入るのが当然なのではないでしょうか。
特に男性はよくわかると思いますが、自分の散らかっていた部屋が突然綺麗に整理整頓されていたら、あまりよい気分はしないのではないでしょうか。
しかし心が苛立つのは自分の中に許せない感情があって、どうしても自己処理ができないでいるためであり、常に苛立っていたり怒っていたりする人は魅力的ではありませんし、その裏に涙や他人に理解されない気持ちがあったとしてもなかなか理解されるものではありません。
それでも愛してくれる人がいたとしたら、心から感謝しなければいけませんよね。
黒人の女性はブレンダ、ドイツ人女性はジャスミンという名前ですが、ブレンダの心の扉をノックし続けてくれるジャスミンは本当に女神のような女性です。
そして徐々に近づいていくことによって芽生えてくる様々な愛情やシャイな感情など、見終わって、久しぶりによい映画を観たとも感じます。
感動は押し付けられるものだとしらけますが、見終わってみるとじんわり来るというのがよいですね。
心の砂漠が潤った夕焼けに染まる様子が感じ取れますよ。
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