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2011.02.19 Saturday


ちょうどこの本が出た3年前に、私は2ヶ月ほどアメリカにいた。
2005年2月のことだ。
写真を見つけて確認したので間違いない。
今から6年も前のことになる。

その時ホームステイをしていた。
ホストマザーが私が洗濯機や雨季だったため乾燥機を使うことに目頭を立てて怒った。
「私の家は貧乏なのよ!」と血相を変えていたのを思い出した。

少なくとも私が見ていたのはカリフォルニアのスタンフォードなどもあるサンフランシスコの少し北。
ここらいったいは学生の雰囲気があり、私のいた地域はのんびりした雰囲気もあった。
スタンフォード近くになると、学生も多くなるし、行き交う人が学生を受け入れていた。
電車の中で(電車の中に自転車を持ち込んでもいい)席に座っていたおじさんが学生に「お前その自転車どうしたんだ」と話しかけ会話していたので知り合いかと思ったらそうじゃないらしい。
そんな風に普通になごやかに成り立っている地域だった。

2005年の州知事は映画でもおなじみのシュワルツネガー知事。
市民活動家がサクラメントの知事のいる建物の敷地内でスピーカーを用意し「(ダム建設反対に際し)やつは鮭を殺すアーノルド・ターミネーター・シュワルツネガーだ!」と叫んでいた。
集団の中でかわるがわるダム建設反対についてマイクでしゃべる。
そういう活動が堂々と認められているらしい。

サンフランシスコ、このサクラメントでもそうだったが、ホームレスがごろごろいた。
友達と歩いているとサクラメントでホームレスに話しかけられ、「何か食べ物ないか?少しの小銭でもいいんだ」とはじめての体験をした。
そのホームレスは丸々と太っており、日本人の感覚として「そんなに太ってんだから、食べ物少しくらいなくても大丈夫だろ」と思った。
後ろから2人組みのホームレスに追尾されたこともあり、「ついてきているけど、なんかまずくない?」と話し合い足早に逃げたこともある。
特にサンフランシスコは見た目で治安のやばそうなところがわかる。
落書きが多くなり、ホームレスが多くなり、ゴミが散乱している。
見た目からして「荒んでいる」のがわかる。
だから興味本位で近づくのはやめていた。

食生活にいたっては日本食に慣れていると、アメリカのスタンダードな食事は「これ死ぬよね」という思いがした。
しょっぱい、脂っこい、甘い。
ミネラルウォーターよりもスプライトやコーラが安く、ファーストフードなど安いものは高カロリーのものであふれていた。
ホストマザーは食事の中に当然のようにお菓子(チップス類)を入れてきた。
さすがにこの食生活では太った。
ダイエット番組でも筋肉隆々の男が「これが俺のダイエット朝食だ!」と自慢げに卵やサワークリームなどでいっぱいの皿を見せられた時には目を真ん丸くしてしまった。
日本食ってカロリー栄養バランス共に優れているのだなとつくづく感じたものだった。
そして日本人は食生活共に恐ろしいほどの贅沢な環境にある。
最低限、水がクリーンで安全で、おいしいところさえもあるというのはとても幸福なことだ。

私がアメリカから帰ってきて3年後、この本が出た。
医療格差と保険会社の詐欺的行為や低所得層による肥満問題、戦争ビジネスの問題を浮き彫りにしている。
すべては中間層がことごとく低所得者層に落ちていき、這い上がるチャンスさえもないということだ。
その貧困問題が最低限の生活の保障を犯し、教育の格差も生んでいる。
そして民間企業による貧困ビジネス。
骨までしゃぶっていくかのような所業。
医療問題や貧困による教育格差、低所得ゆえにバランスのいい食事が取れず高カロリー食品をメインにとらざるを得ない状態、そこまではアメリカで多少暮らしていたから「ああ、あの延長線上にもっとひどい状態があるのだな」と想像できる。
しかし最もぞっとしたのは民間企業による傭兵派遣だ。

ゲームで「メタルギアソリッド4」というのがあり、このゲームでは民間企業による代理国家戦争というのを描いていたけれど、これを思い出した。
民間企業に個人情報がすべて「パッケージ」として細かにデータとして知られている上に、このコンピューター社会による、マイナス面がもろに出ていた。
我々の行動記録はほとんどデータとして法人や国家が管理している。
その情報はひとつの「パッケージ」としてまとまって管理されているわけだ。
「流出」でいちいち騒いでいるけれど、民間企業ならば倒産や合併後の情報管理までは制御しきれないと思う。
そして生活に困窮していれば、金を積まれれば個人情報は売ってしまうのではないのか。
そういう個人情報による「個人の格付け」。
借金状態から返済履歴、収入や現在の生活状態、家族構成、病歴、交友関係、購入物品履歴などなど、すべてのものが利用できる「パッケージ」として存在し、それが民間傭兵派遣会社に利用される。
高収入をうたい、最前線に派遣し、つかい捨てる。
これらはすべて低所得層がターゲットにされる。

この手の動きは戦争を放棄している日本とも皆無ではない。
戦争に参加しなくても、巻き込まれる可能性すらある。
そして日本人だって生活に困窮すれば悪魔に魂を売る人間だって出てくる。
これからの日本はアメリカのような国に巻き込まれてはいけないし、お金さえあれば何でもできてしまうような状態の中で他人の人生を金のために利用するような悪をのさばらせてはいけない。

アメリカは確かに自由だった。
しかし6年もたってその面影もなくなっているのかもしれない。
このことは私がいた6年前のアメリカが貧困社会への過渡期だったとしても、ものの数年でガラリと変化してしまうくらい国家というのはさじ加減ひとつで不幸な人間を数多く作り出すという教訓を肝に銘じておかなければいけない。

予断だけれど、これからの時代、貧困層は「現実」であえぎ、富裕層はより浮世離れしたバーチャルな世界で人生を謳歌するという2極化が起こるかもしれない。
もしそうなったら、貧困層からは偉大な政治家は資金力の問題で出てこないだろうし、お金を持っている人間は現実感がないから、いつまでたっても溝が埋められない。
こういう単純な構造に陥ることだけはよして欲しいと願うばかりだが、アメリカに似てきている日本は、これからどうなるだろうかと心配するばかりである。


P.S.
医療の問題に関してはマイケル・ムーアの「シッコ」。
マクドナルドの高カロリー食品のとりすぎによる内臓機能低下についてはモーガン・スパーロックの「スーパーサイズ・ミー」がある。
合わせて見るといいかもしれない。


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